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渋谷川を歩く

渋谷川とは:

 

山手線の内側を流れる川と言えばまず「神田川」だが、「渋谷川」も繁華街を流れる数少ない水系で、都心の治水安全上重要な役割を果たしている。国土交通省河川局指定の2級河川である。

 

水源は新宿御苑で道玄坂沿いの宇田川などの支流を合わせ、明治通りに沿って南下し天現寺に至る。余談だが童謡「春の小川」は宇田川の支流「河骨川」を謳っており、上原辺りには昔、清水がながれていた。

 

天現寺から先は古川と名を変え古川橋から北上し、麻布十番に至り、そこを東進し赤羽橋から浜崎橋を経て東京湾にに注ぐ。

 

渋谷の街には高速道路が走っているがその下の道路が国道246号線通称六本木通りで、その明治通りとの交差点横に渋谷川/稲荷橋がある。そこまでは全て暗渠となっており、ここで初めて地上に顔を出す。これから下流が行政区分上の「渋谷川」であり国交省管轄、暗渠部分は東京都下水道局の管轄である。

 

従って「渋谷川」は稲荷橋から天現寺橋までの2.4kmを指す。

 

渋谷は谷間であるから雨が降ると水が集まって来て、ハチ公前広場など度々浸水していたので、宮下公園下に遊水池を掘り、さらに殆どの水は別系統の下水に誘導しているので、通常は殆ど水は流れていない。大雨が降った時、下水から溢れだした水を逃がす役割を担っているだけである。

 

渋谷再開発の最大の問題はこの渋谷川である。JRと明治通りの間はかなり狭い、ここに川が流れている。川の上にはビルの地下は作れないので、旧東横百貨店東館には地下街が無く、食品売り場が1Fにあった。旧東横線渋谷駅も階上駅だった。

 

川の移設工事も過去2度ほど行われたが、明治通りは既に大きな下水管が埋設されている関係上東進も限界であった。

 

そこで川の流れをたどることで、工事の流れや街の変遷を確認してみた。

以下写真で辿ることにする。 

 

↑ ハチ公前広場から右に行くと(青山通)JRのガードがあるが、潜るとすぐ左側に「宮下パーク」という遊歩道が作られている。奥に見えるのが宮下公園。これが渋谷川が暗渠になった筋である。

右角のビルがみずほBK/渋谷支店で昔の宮益橋のあった場所で、一昔前の渋谷川の起点であった

 

 

← 

この場所から下流を眺めると巨大なビルが建っている。

百貨店や東横線渋谷駅を壊して建てた地上47階建てのガラス張りの建物で「スクランブル・スクエアー」と言う。

 

ビルの地下には副都心線と繋がった東横線の改札口があり明治通り内回りに面したヒカリエと連結し、かつJRともつながった、ターミナル駅になっている

 

又ビルの外周りはバスターミナルが整備中で完成すると様相が一変する。

 

付け足しだが、この巨大ビルの右側、即ちJRホームの上には中央棟が出来、更にその西側には西棟が建って3棟が並ぶ。これは相当先の話で私が生きている間には無理。

 

 

 

↑ オヤッ?

ところで、川は何処に消えたのだろう、何とそれはビルの中を貫いて走っていた。要するに天井裏を川が流れているのだ。右の写真の少し天井が下がっているところがそこ。

改札口のあるこの階は地下3階に相当する深さ。ここに至るには長い長いエスカレーターで降りなければいけない。

ビルの表示ではB2だけ記載されているが、実質B3であろう。

ここから川を想像できない見事な設計である。

 

↑ 左の写真はスクランブル・スクエアーのどてっ腹を貫いた川が初めて地上に顔を出す稲荷橋である。 左の建物が渋谷エクセルホテル東急。

右の写真は六本木通りと明治通りの立体交差点でスクランブル・スクエアーからこの歩道橋を通り稲荷橋・ホテルに直接出られる。

 

↑ 右の写真がホテル(外壁が変わっていて目立つ)で手前の欄干が稲荷橋。

ここから川の右岸が整備されて、洒落たカフェなどが出来、なかなかの雰囲気である。

でも不思議?JRと明治通りという狭隘な土地柄に新たな遊歩道など出来る訳ないと、疑問視していると左の説明文。

ここはかつて東横線が地上を走っていた軌道敷の活用なのだ。

今はこの区間地下を走っている。

 

↑リバー・ストリートを過ぎると最早川沿いの道は素直には辿れない。場所によっては1M未満の草まみれ、それも途切れて迂回を余儀なくさせられる。それでも所々右岸には下町風情が残っている。左岸は明治通り拡幅工事による建て替えでビルが連立している場所が続く。

右左対照的な場所。

尚最後の川の写真だが、既に説明した通り渋谷川は殆どが下水線に流されて普通は水が無いので、それでは川の景観を維持できないと言う事から川のおわん型擁壁面に小さい穴が開いており、そこから水道水をチョチョロ流して川らしくしている。水深は10cm位か、浅いが清水が流れている。

 

 

↑ 明治通りは拡幅整備され綺麗になった。

渋谷橋は駒沢通とクロス、天現寺橋は外苑西通りとクロス、覚えておくと便利。

尚、天現寺交差点右手前が渋谷区恵比寿、左側が渋谷区広尾、右向こう側が港区白金、左向こう側が南麻布、この辺まで来ると病院、学校、大使館など大型区画が点在し街区が一段と整然としてくる。

 

 

最後に「地名由来」を尋ねてみた。

 

← 金王八幡社

渋谷という地名は何処から来たかは実ははっきりしないが、平安末期にこの地を治めていた渋谷氏から来たのではという説が有力である。渋谷氏は川から少し離れた高台に城を作り、八幡神を勧請した。城は消滅したが神社は残ったのでここが発祥の地として知られている。青山通りを少し上り右に入った場所にあり、ここだけゆったりした時間が流れているような、隣には稲荷神社もあり緑深い一度は訪れたい特別な雰囲気のある場所であった。

少し前のベストセラー小説「天地明察」にも登場したので、名前は全国的に知られているかもしれない。

 

 

街歩きが趣味で無い方には退屈だったかもしれませんが、お読みいただきありがとうございました。以上です。

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コメント: 1
  • #1

    楡 郁太郎 (日曜日, 25 4月 2021 22:19)

    興味深く読ませてもらいました。渋谷川に沿って都バスが何本もはしていますのでこの周辺はよく行きます。写真美術館に行くのもこの路線を利用してゆきます。白川義員展第2弾も宣言発令前に見られてよかった!写真家協会70周年展も面白かった。